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第36回松本市景観賞 受賞作品

更新日:2025年12月12日更新 印刷ページ表示

最優秀景観賞

LARCH BAKE AND GELATO

Larch写真​​

所在地:松本市埋橋2丁目7-12
設計者:(株)スタジオアウラ
施工者:小笠原建築(株)

 天然スレートをはじめとした外壁や屋根の素材を丁寧に選び、細部まで手を抜かずに仕上げられた建物が醸し出す雰囲気が高く評価されました。幹線道路と住宅街という異なる環境と隣接する場所で、新たな景観の創出を意識して、店舗としてのにぎやかさを保ちながらも、落ち着いたまちなみにも馴染ませたデザインが素晴らしいと感じました。また、店先のベンチと植栽がポケットパークのような空間を形成し、敷地全体がまちに対して開けている点も好印象です。
 この建物が日常の中にある身近なお店として多くの人の目に触れることで、市民が景観に興味を持つきっかけの場所となることを期待しています。

部門賞(2件)

鰻家 岡むら(建築物・工作物部門)

鰻家岡むら写真

所在地:松本市中央3丁目3-17
設計者:川窪建設一級建築設計事務所
施工者:川窪建設(株)

 白壁と黒いなまこ壁の日本の伝統的な蔵造りの良さをそのまま生かした、素晴らしいリノベーションだと感じました。女鳥羽川沿いという、中町通りに対して「裏」になる立地をそのまま活用した結果、入口が正面から見えなくなり、思わず中へ入ってみたくなる雰囲気が作り出されています。
 また、設備回りを表側からは見えないようにする配慮や、アプローチ部に伝統的な造園技法が使われている点も高評価となりました。
 立派な蔵をなるべく手を加えずにどう残していくかということについて、とても前向きで良い手法だと思いました。蔵のリノベーションの好事例として、今後の松本市の景観形成に影響を与えていくことを期待しています。

四賀の古民家カフェ(建築物・工作物部門)

四賀の古民家カフェ写真

所在地:松本市中川7768

 ただ古民家を新しい用途に合わせてリノベーションしただけで完成とするのではなく、オーナー自らが手を加え続けることによって、オーナーの個性や人柄が見える、とても楽しいリノベーションになっていると感じました。手の加え方も素晴らしく、昔ながらの古民家としての姿も残しながら、物語に出てくるような個性的な建物となっており、四賀の風景によく馴染んでいる点も高評価です。
 総じて"活かす"リノベーションの好事例といえるでしょう。まだまだ変わり続けていくであろうこの古民家カフェが、これからどのようになっていくのか、とても楽しみです。

奨励賞(10件)

ぬのや旅館

ぬのや旅館写真

所在地:松本市中央3丁目5-7

 中町に古くからある旅館の建物を、外観を維持しながらそのまま旅館として活用し続けていることが高く評価されました。中はきれいにリノベーションされていますが、外観は昔の姿を残しつつ、見せたくない部分を上手く隠すなどして、まちに馴染んでいる点が素晴らしいと感じました。
 今後も歴史ある旅館として、中町の景観の一部であり続けていくことに期待しています。

屋敷の四方を囲む生垣・匠の技の伝承

屋敷の四方を囲む生垣・匠の技の伝承写真

所在地:松本市新村
施工者:(株)滝澤工務店、(株)壁匠トーワ​

 樹齢100年にも及ぶという生垣や松はそれだけでも大変立派ですが、手をかけてきれいに維持されており、そこを通る人にぜひ見てほしいという、景観的な意思表示を感じることができます。また、敷地外からはわずかに見えるだけの母屋のなまこ壁の修復も、モルタルを使わない伝統的な工法によって行われている、「本物」のなまこ壁であることに拘りが現れています。
 維持・管理がとても大変だと思いますが、今後もこの素晴らしい景観を受け継いでいってほしいと思います。

結ぶ小さなコートハウス

 結ぶ小さなコートハウス写真

所在地:松本市城山
設計者:(株)林建築設計室​
施行者:(株)滝澤工務店

 前面道路が傾斜している角地という難しい立地の中で、プライバシーとまちに対する開き方のバランスをとるために、多くの工夫がされている点が高評価となりました。
 濃い色彩の建物を背景として沈み込ませることにより、高原風の植栽が引き立てられていて、中庭から伸びる大きな木も、緑豊かな印象を与えることに寄与しています。

黒の事務所 白の家

黒の事務所 白の家写真

所在地:松本市埋橋1丁目3-14
設計者:源池設計室
(株)
​施工者:(株)滝澤工務店

 上品な素材が丁寧に使われており、周囲の住宅街に馴染みながらも、形もスタイルも異なる白と黒の二つの建物が街区の角地にあることで、まちなみに適度な締まり感を与えている点が好印象でした。
 道路際の植栽も、限られたスペースを最大限活用して沿道を楽しませようという意図を感じることができます。

まちなかのテント

まちなかのテント写真

所在地:松本市鎌田1丁目5-13
設計者:(株)サンプロ
施工者:(株)サンプロ

 広い幹線道路に面した敷地に立地する建物群は、キャンプ用品メーカーの社屋であることが一目でわかるデザインはインパクトがありますが、一つ一つの建物は敷地裏側の住宅地と同じようなスケール感に収められており、周囲のまちなみとも調和しています。
 また、建物や植栽の配置もキャンプ場をイメージするようなものになっており、全てがコンセプトどおりで素晴らしいと感じました。

つい見入ってしまうお店

つい見入ってしまうお店写真

所在地:松本市中央3丁目6-15

 店全体が一つのショーウィンドーになるように、大きなガラスによって道路に全面的に開かれており、ガラスにポスターやシール等を貼らずにきれいに維持されていることや、お店の雰囲気に合った照明の使い方など、外から見られることを意識した店構えが素晴らしいと感じました。また、周囲の建物との繋がりも高評価となりました。
 こういった本物の作業風景を見ることができる場所が増えていくと、より「工芸・クラフトのまち」松本らしい景観になっていくのではないでしょうか。

寝床でゆったり(ナワテ横丁)

寝床でゆったり写真

所在地:松本市大手4丁目

 入口から見ると少し入りづらさはあるものの、いざ入ってみると石張り舗装の両側に並ぶ店舗や公民館などは意外なほどきれいに整備されており、お店の方々からもこの通りをきれいに維持していこうという意気込みが伝わってくる点が好印象です。
 中町や縄手通りとはまた異なる「昔ながらの松本の風景」として、今後さらなる活気が出てくることに期待しています。

女鳥羽川の河原(女鳥羽川をきれいにする会の活動)

女鳥羽川の河原(女鳥羽川をきれいにする会の活動)写真

所在地:松本市水汲、浅間温泉ほか
活動団体:女鳥羽川をきれいにする会​

 女鳥羽川沿いを散歩する人や、河川敷の公園で遊ぶ子どもたちの姿を見ることができるのも、河川敷がきれいに維持されることによって、市民が安心して女鳥羽川とふれあうことができるからだと感じました。行政だけでは対応しきれないところを、市民の方々の活動によって補っていただくことの大切さがわかる事例です。
 松本の重要な景観としての女鳥羽川を守っていくために、大変だとは想像しますが、今後もぜひ継続していただきたい活動です。

女鳥羽川とともにあるまつもと

女鳥羽川とともにあるまつもと写真

所在地:松本市大手、中央ほか

 これまで松本市景観賞では女鳥羽川に関するまちづくり活動を何件か表彰してきましたが、女鳥羽川そのものについては応募自体がありませんでした。それくらい市民にとって女鳥羽川は日常に溶け込んでいる存在であり、松本の景観の一部になっているのだと思います。
 今回改めて女鳥羽川を「オープンスペース」の景観として見つめなおし、その良さを再確認することができました。今後も市民の憩いの場として、さらなる整備・活用がされていくことを期待します。​

波田のすいか畑からの松本盆地

波田のすいか畑からの松本盆地写真

所在地:松本市波田

 すいか畑と松本盆地が同時に見える、松本ならではの景観であることが高評価となりました。また、春から夏にかけてのすいかが栽培されている時期はもちろん、秋は紅葉、冬は雪景色など、四季折々の松本を俯瞰して見ることができる視点場としても優れています。
 この景観は誰かが意図して作ったものではなく、農家の方々の生業によって現れた土地の姿に景観としての価値があると気づいた方がいらっしゃったことが素晴らしいと感じました。​

第36回 松本市景観賞 総評

景観賞選考委員会 会長 石井信行

 まちづくりにおいて、その活動が成功するかしないかを決める重要な要素として、その土地に関わる人々の地域愛があると思います。生まれ育った場所だから、何かしら自分の興味があるものがあるからなどきっかけはさまざま考えられますが、地域愛があると愛する対象をもっと知りたいと思うようになり、知ることにより地域に対する理解が深まり、地域の良いところを守りたい、今よりより良くしたいという思いにつながるでしょう。松本に対する地域愛を具体的に表現して頂いた方々を多くの市民に紹介し、その思いに共感していただくというためにこの景観賞はあります。

 本年度選出した、最優秀賞1件、部門賞2件、そして奨励賞10件の計13件には、それぞれの地域愛をみることができました。

 最優秀景観賞として建築物・工作物部門に応募された「LARCH BAKE AND GELATO」を選びました。施主の「まちかどに公園のような場所を作りたい」という思いが、外壁や屋根の素材の選択、細部の仕上げ、そして店先にうまく配置されたベンチや植栽に反映されています。幹線道路と住宅街という異なる環境と隣接する場所で、新たな景観の創出を意識して、店舗としてのにぎやかさを保ちながらも、落ち着いたまちなみにも馴染ませた作品となっていることを評価しました。

 部門賞は建築物・工作物部門に応募された「鰻家 岡むら」と「四賀の古民家カフェ」を選びました。いずれもリノベーションですが、対照的な作品です。「鰻家 岡むら」については、白壁となまこ壁の日本の伝統的な蔵造りを保存し、その良さを引き立てるような外構の整備をしていることを評価しました。対して、「四賀の古民家カフェ」は、ただ古民家を新しい用途に合わせてリノベーションしただけで完成とするのではなく、オーナー自らが手を加え続けることによって、オーナーの個性や人柄が見える作品となっていることを評価しました。

 奨励賞は、建築物・工作物部門に応募された住宅が1件、店舗を含む商業施設が4件、そして個人宅の外構1件、まちなみ部門に応募された街路空間1件、まちづくり活動部門に応募された河川空間の整備1件、そしてオープンスペース部門に応募された河川1件および盆地眺望1件の合計10作品を選びました。これらの中には、日常の生活で出会う街角や触れたりする眺望があり、実は普段の生活の中で周囲の環境に対する感度を上げることによって、身近な景観の価値について気付くことができることを教えてくれています。

景観賞選考委員会 副会長 佐倉弘祐

 本年度も副会長として審査に携わる機会を頂き、心より感謝申し上げます。今回の審査を通じて強く印象に残ったのは、松本市景観賞が36年間にわたり積み重ねてきた活動が、市民一人ひとりの「景観に対する意識」として確実に根付いているということでした。過去に奨励賞を受賞した方がより良い賞を目指して再び応募された作品、過去の受賞者のご家族による応募作品、過去に受賞した建物の近隣に新たに生まれた推薦作品など、その広がりと連鎖に、景観賞の継続的な意義を改めて感じました。

 最優秀賞および部門賞に選ばれた三作品は、新築・保存再生・改修という異なるアプローチでありながらも、地域の風土や歴史、そして人々の営みと真摯に向き合いながら、現代のまちにふさわしい景観のあり方を丁寧に探っている点が共通しています。

 最優秀賞の〈LARCH BAKE AND GELATO〉は新築でありながら、天然スレート屋根や木材・植栽の用い方、通り沿いに設けられた誰でも腰を掛けられるベンチなど、地域環境と調和しながら街に開かれたデザインを実現しています。店舗としての存在感を保ちつつも、周囲の雰囲気に自然に馴染むその佇まいからは、設計者・施工者・オーナーの皆さんの高い景観意識が伝わってきました。

 部門賞の〈鰻家岡むら〉は、敷地奥にあった蔵をあえて表に引き出さず、裏の性格を保ったまま魅力として活かした好例です。そこには、建物そのものの歴史だけでなく、この場所がかつて担ってきた空間の記憶を尊重しながら、新たな命を吹き込もうとする姿勢が感じられます。土蔵特有の厚みのある壁と漆喰の質感が、夜間照明によってさらに際立ち、長い時間の流れの中で土地と人が紡いできた物語を静かに語りかけてくれます。

 同じく部門賞の〈四賀の古民家カフェ〉は、オーナー夫妻が長年にわたり自らの手で少しずつ改修を重ねてきた建物であり、地域の資源や風土を尊重する姿勢に心を打たれました。古民家の素朴な素材感と手仕事の積み重ねが、訪れる人をやさしく迎え入れる空間を生み出しています。

 こうした建築や工作物は、単に美しさを競うものではなく、土地が積み重ねてきた時間や記憶、人々の関わり合いを丁寧に受け止め、その上に新たな関係を築こうとする試みとして評価されるべきものです。美しい景観とは、人の思いやりと土地の記憶とが呼応しながら、ゆるやかに更新されていく関係性の総体なのだと、今回の審査を通じて改めて感じました。

 今後も、松本のまち全体がこのような「物語のある景観」に包まれていくことを願ってやみません。

第36回松本市景観賞について

 松本市景観賞は、景観に対する市民意識の高揚と、良好な景観形成に向けた市民のまちづくり活動の推進を図るものとして、平成元年にはじまりました。
 今回は最優秀景観賞1件、部門賞2件、奨励賞10件の計13作品が受賞となりました。令和7年度までの応募総数は976件にのぼり、受賞作品数は314件をかぞえます。

表彰式について

 令和7年度松本市景観シンポジウムにおいて、表彰式を行います。

 日時:令和8年2月7日(土曜日) 13時00分~16時30分
 会場:あがたの森文化会館 講堂

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