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第34回松本市景観賞 受賞作品

更新日:2023年11月10日更新 印刷ページ表示

第34回松本市景観賞について

 松本市景観賞は、景観に対する市民意識の高揚と、良好な景観形成に向けた市民のまちづくり活動の推進を図るものとして、平成元年にはじまりました。
 第34回松本市景観賞としては、最優秀景観賞1件、部門賞2件、奨励賞4件の計7作品が受賞となりました。令和5年度までの応募総数は909件にのぼり、受賞作品数は290件をかぞえます。

 

最優秀景観賞

松本三の丸スクエア

所在地:松本市大手3-7-10

所有者:徳田 安孝

設計者:アトリエ・アンド・アイ岩岡竜夫研究室、MORIIS ATELIER

構造設計:OUVI

設備設計:岡江建築設計研究所+CIRCLE

施工者:有限会社岡江組​

(写真左:山田新治郎撮影)​

 3つの異なる機能をもつ分棟型の建築を、共通のデザインコードを用いることで、モノトーンで落ち着きのある、洗練された雰囲気の建物群としてまとめています。窓の大きさや配置にも工夫がみられ、中庭から松本城への視線の抜け方や裏側への配慮、室外機の配置など、細部までしっかりとデザインされています。
 お城側の植栽についても、新築に際して更地にするのではなく、既存の樹木を活かした計画になっている点が評価できます。一方、正面のサインについては、視認性・機能と空間デザインとの整合性について改善の余地があるという意見がありました。
 松本城南側の外堀大通りに面した立地において、1つの立派な建物を建てるわけではなく、分棟型で配置や向きを工夫して空間が構築されているように感じられます。今後も追求しやすい手法であり、感心させられました。

部門賞(2件)

松本本箱(建築物・工作物部門)

所在地:松本市浅間温泉3-13-1​

所有者:株式会社小柳 代表取締役 岩佐十良​

設計者:SUPPOSE DESIGN OFFICE

施工者:株式会社アスピア

 浅間温泉の旅館をリノベーションしたもので、敷地内に昔からある建物や植栽を活かしながら、新旧が調和した空間に生まれ変わっています。時を経た重さを感じられる庭と、周囲と調和した落ち着いた色合いの旅館に味わい深さを覚えました。またリノベーション前に比べて、宿泊者以外にも敷地が開放され、1階の店舗や小路に入りやすいように設計されていると感じられました。エントランスまわりの緑化について高い評価がある一方で、アプローチは高齢者などにとって歩きにくいという意見がありました。
 また、駐車場や宿泊者の受付を別の場所に設け、街を歩いてもらいながら旅館に至るというシステムは面白いと感じました。若い世代を中心に多くの方が街に訪れており、これからの浅間温泉の活気・盛り上げに繋がる良いきっかけになることを期待しています。

庄内ほたると水辺の会の活動(まちづくり活動部門)

所在地:松本市筑摩1-23-10

活動団体:庄内ほたると水辺の会

 市街地のショッピングセンターの近くでホタルが見られることに、とても驚きました。区画整理事業で整備された公園に水路が作られ、地域住民・子どもたち向けにホタルや生き物の観察会・学習会を行うなど、20年近く地域に貢献されてきたことを高く評価しました。公園の一画にこのような環境を作り、維持していくことは、会の活動に加えてホタルの住めるきれいな水が必要不可欠であり、松本らしさを感じます。
 会の活動モットーや目的を伝える手描きの看板にも魅力を感じました。最終的には、地域住民や訪れる人に自然や生き物への接し方が広く認知され、看板や柵がなくとも身近に触れられるような環境を末永く残していけるよう、活動が続いていくことを期待しています。

奨励賞(4件)

料理屋 そらのかなた

料理屋 そらのかなた 外観  料理屋 そらのかなた 看板

所在地:松本市中央1-14-10

所有者:塩原 誠

設計者:一級建築士事務所 宮澤建築設計室​

施工者小笠原建築株式会社

造園:三楽

左官:左官白沢

大工:矢崎建築

看板:株式会社優屋

花:LUV CLOVER

 木製の縦格子をファサードに用いた和風モダンな低層で外部に対して閉じた建物と植栽が、高層建築が建ち並ぶ伊勢町通りにあって、ふと足を止めてみたくなるような落ち着いた雰囲気を演出しています。
 店の前には塀を模した自立看板が立ち、控えめな店舗サインによって料理屋であることを示しつつ、目隠しとしても機能しています。
周りと合わせて壁面をセットバックさせながらも、限られたスペースの中で店先に鉢植えや花を飾るなど、緑をふんだんに使っており、店主の心意気が感じられます。低層の建物が伊勢町通りの景観に合っているのかどうかは議論になりましたが、このような植栽による周囲への気遣いが、通り全体にも広がっていくことを期待しています。

筑摩の店舗併用住宅

筑摩の店舗併用住宅 外観 筑摩の店舗併用住宅 外観2

所在地:松本市筑摩1-6-25

所有者:青木 太河

設計者:株式会社アーキディアック

施工者:株式会社アスピア

 控え目で落ち着いた色合いの外壁と、高さを抑えた低層でのびやかな建物の形状により、静かな住宅街の中で周辺と調和しているように感じられました。
 道路から見ると印象的な看板と植栽が目に入りますが、やや無機質な印象があります。店舗の入り口に鉢植えを置くなど、正面にもう少し緑を増やしていくと、住宅街にさらなる潤いを与える魅力的な景観になっていくのではないでしょうか。

銀色のイチョウのじゅうたんに映える児童遊園

大仏児童遊園 銀杏のじゅうたんと遊具 新緑の児童遊園

所在地:松本市入山辺大仏6945-1​

所有者:松本市

管理者:大仏町会

 小学校の分校跡を児童遊園に整備したもので、シンボルの大きなイチョウと小さな遊具のコントラストが印象的な空間でした。このような巨木が健全に育っているのは重要で、秋になってイチョウが色づけば、常緑樹を背景にして存在感が一層際立つものと思います。
 現地での審査中にも、周囲に住む子どもたちが楽しそうに遊ぶ姿が見られ、イチョウのビューポイントについて教えてくれるなど、地域の住民が愛着を持っていることが伝わってきました。
 学校の跡地という歴史があり、地域のお祭りでも活用されているようですので、周辺との関係性を意識しながら、そういった歴史や文化を活かした空間づくりを行っていくと、一層魅力が高まるものと思います。今後も居心地の良い地域の児童遊園として、整備を続けていただきたいと思います。

浅間温泉のまちづくりに関する活動

浅間温泉 夏祭り 浅間温泉 街歩きの様子

所在地:松本市浅間温泉3-13-1ほか​

活動団体:松本十帖

 活動期間は短いため、継続性についてはまだ評価できないものの、活動の取り組みによって浅間温泉に新しく出店する店舗が増えており、街を変える力を持っている点を評価しました。既存の建物を利用した出店が続いており、資源を適切に活かしながらまちの魅力を高めているように思います。街の中に多様な店舗を点在させた松本十帖を中心に、訪問者が街を巡ることにより、街が活気づいているようにみえます。
 現時点では、松本十帖の活動が中心になっているように思いますが、今後は地域住民や他の旅館とも連携しながら、まちづくりが進んでいくことを期待しています。どのように街が活性化していくのか、今後が楽しみです。

 

第34回 松本市景観賞総評

景観賞選考委員会 会長 石井信行

 本年度は、久しぶりに審査員全員で一緒に応募作品を回ることができ、選考においては、現地での意見交換を踏まえた充実した議論ができました。一方、応募作品数は例年に比べて少なく、当景観賞が目指す「市民の景観に対する意識の向上」のため、より多くの方々に関心を持って頂けるよう工夫と努力が必要であることも合わせて議論されました。
 今年度は応募作品数が少ないながら、景観および景観まちづくり活動をどのように評価するかについて活発な議論が行われた作品があり、その成果は来年度以降の審査に反映されると期待することができます。基本的なことですが、景観の評価においては対象となる建物や空間を周囲から切り離して見るのではなく、それらが立地する場所をどのように理解しているか、既存の周辺の景観とどのような関係を作ろうとしているかが重要となります。また、景観まちづくり活動については、継続性はもちろんのこと、具体的な影響がどのように景観に現れているか、活動の社会性などが重要となります。今回の応募作品の中にも、単体または単独では優れた点があるものの、上記の観点から惜しくも受賞に至らなかったものがありました。
 最優秀景観賞として建築物・工作物部門に応募された「松本三の丸スクエア」を選びました。本作品は松本城の正面に立地し、かつ拡幅された都市計画道路に面した敷地に医院と関連する施設を配置した作品で、お城側の沿道部分に緑地のオープンスペースを配し、建物は分棟化することでボリュームを抑えると共に、隙間の空間に特徴を与えていることを評価しました。
 部門賞以上として建築物・工作物部門から1件、まちづくり活動部門から1件を選出しました。それぞれが異なる地域に立地していながら、それらの場所の歴史や環境との関わりが明確であることが評価されました。「松本本箱」については、建物と敷地が有する歴史性の中から、生かすもの、変えるもの、そして新たに加えるものを明確に意識し、まちづくりと連動させていることを評価しました。「庄内ほたると水辺の会の活動」は、本会の活動により貴重な環境が保全されたこと、そしてその環境を維持するために様々な活動を地域の人々を巻き込んで継続して実施していることを評価しました。
 奨励賞については、建築物・工作物部門から2件、まちづくり活動部門から1件、オープンスペース部門から1件とバランスよく選出することができました。

景観賞選考委員会 副会長 宮沢 功

 松本市の景観とは、今年改定された「松本市景観計画」にも記されている様に、松本市の多くの自然景観、地域の風土、歴史、文化などを背景として様々な要素が生かされ、地域に調和した人々の生活施設などが総合されたものとして今まで考えられていましたが、松本には地域の歴史や風土が作る地形や自然景観要素が豊富にあります。景観計画においては、地形的な景観ベースと今までと変わらない自然景観要素に対して必要な活用方法が提示されていました。この様な前提で応募された景観賞の作品には、いろいろな提案がありました。
 最優秀景観賞「松本三の丸スクエア」は、二階建ての三つの建築〈住宅棟、クリニック棟、ギャラリー倉庫〉に加えて四つの庭を設け、周辺に対して開かれた緑の憩いの場と一体となった景観となっています。この様に種類の違った建築と全体に配置された自然要素が、松本城の南側地区に新たな三の丸スクエアとしての景観を成立させる試みが素晴らしいと思います。
 建築物・工作物部門賞の「松本本箱」は、場所の性格もあり外部から多くの人の訪れが期待できますので、浅間温泉の中心地の特徴的な景観として、まちづくり活動とも関連させながら引き続き取り組んでいただけるよう期待いたします。また、まちづくり活動部門賞の「庄内ほたると水辺の会の活動」については、季節の変化に対応した植物そのものの変化や、ほたる以外にも蝶々・昆虫や小鳥・渡り鳥など様々な生き物の集まる場所となる可能性も感じました。
 奨励賞に選出された4作品については、新たな松本の特性をアピールする景観をこれからも考え、実現してほしいという期待があります。自然要素の景観計画は、春夏秋冬の季節による景観の変化が良い状況も含めて変化があると思いますので、ぜひその様なことも配慮して計画していただきたいと思います。
 私の考えとして、松本の様な地形的な要素と植栽などの自然景観を活用する場合に大事なことは、その景観の中に生活する人々や訪問者が視覚的な景観を受けとるだけでなく、その景観の中から人々の心に対しどの様な感覚が伝達されるかが、松本らしさをアピールするには必要だと思います。生活者や訪問者がどの様な感覚的良さを感じるか、松本独特の満足度を、ぜひ考慮していただきたいと思います。

 

表彰式について

 下記の通り表彰式を実施しました。

 日時:令和6年1月28日(日曜日) 13時から14時まで
 会場:まつもと市民芸術館 小ホール

 

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