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下神遺跡 1983年(昭和58年)
奈良三彩小壺が出土
神林地区は、東西を奈良井川と鎖川にはさまれた古くからの水田地帯です。
下神(しもかん)遺跡は、神林地区で最も標高が低い下神・町神(まちかん)地域に広がる非常に大きな遺跡です。
調査当時は下神遺跡と町神遺跡が分かれていましたが、現在は下神遺跡に統合されています。
発掘調査は、昭和58年(1983)のほ場整備事業にともない、遺跡内の7地点で行われました。
その結果、平安時代の竪穴住居跡79軒、掘立柱建物跡35軒、および多数の土坑・溝・ピットなどの遺構と、土師器・須恵器を中心とした生活用具が出土しました。
出土品の中でとくに注目すべきものは、熊坂地籍の第10号住居跡から見つかった奈良三彩小壺(三色の釉がかかった焼き物)です。
この奈良三彩小壺は、当時の政治・文化の中心地から、この地の有力者へ権力の象徴としてもたらされたものと考えられ、昭和63年(1988)に松本市重要文化財に指定されています。
昭和58年の調査の後、昭和60・61年には、長野自動車道建設に伴う発掘調査を長野県埋蔵文化財センターが行われました。
その結果、中央の貴族であった藤原氏の荘園を示す「草茂」と書かれた墨書土器などの遺物・遺構が多数出土しました。
昭和30年代に刊行された『東筑摩郡・松本市・塩尻市誌』では、一帯の遺跡の状況が「質量ともにはなはだ貧弱」と述べられていたイメージが、両調査の成果で大きく変わったといえます。
カメラでパチリ!
発掘風景
奈良三彩小壺(熊坂地籍 第10号住居跡出土)
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石錘(せきすい)出土状況(編物用と考えられる)
発掘調査報告書
『松本市下神・町神遺跡 緊急発掘調査報告書』<外部リンク>
松本市文化財調査報告29
松本市教育委員会 1984年
※書名をクリックすると奈良文化財研究所の「全国遺跡報告総覧」にリンクします。
場所を地図で確認
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Facebook掲載(初出)
2023年3月29日