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筑摩小の『たてわり清掃』
筑摩小学校では,たてわり班の活動を大切にしています。
いろいろな「たてわり班活動」の中の,『たてわり清掃』について紹介します。
以前は,学年ごとに清掃分担区を決めて,その分担区を学級で分担(期間を決めて交替)して,清掃活動をしていました。
その清掃分担区を見直し,ここ数年,清掃活動を「たてわり活動」に位置付け,清掃分担区のうちで全校が共用している部分について,たてわり班で清掃活動をしています。
ただし,それぞれの学年や学級が使用している教室や特別教室などは,その学年学級が今までどおりに担当し,全校が共用している児童昇降口や階段,廊下などを清掃時のたてわり班が担当することにしています。
方法として,各学級から数人がたてわり清掃に出かけて,その中で班を編制して,他学年とかかわりながら掃除に取り組めるように考えました。
具体的には,たてわり清掃の分担で,1年生から6年生までが混ざった(たてわりの)小集団を作ります。それぞれのたてわり清掃班で,4,5,6年生から班長を選出します。班長を中心に,自分の分担責任をはっきりさせて,手順に従い,時間いっぱい使って,学校じゅうをピカピカにしようとはりきって清掃に取り組んでいます。
このようにして,たてわり清掃班による清掃活動を通して,他学年の友だちとかかわりを深めることで,子どもたちのより望ましい成長を期することとしました。
たてわり清掃活動によせる願い
清掃活動のねらい
毎日の清掃活動を通して,きれいにすることの気持ちよさに気付くとともに,友だちと協力したり,自己の役割を果たしたりしながら,勤労意欲や公共心を養い,豊かな人間性をもつ子どもを育てることをねらいとし,「自分たちの筑摩小学校」を「自分たちの力で,さらに美しくなるようにしよう」という目標のもと,「自分たちで課題を見付け,それに向かって取り組んでいこうとする態度」を培っていきたいと考えています。
清掃活動によせる願い
(1)掃除のやり方と子ども一人一人の分担がはっきりわかるようになる。
一人一人の子どもが,「どこで」「どんな仕事を」「どんな順番(手順)で」「どのように」やるのかがしっかりわかるようになる。
きれいにするための見通しが持て,時間配分に気を付けながら,しっかりほうきや雑巾がけをして,きれいにできる。
(2)清掃時間(15分間)を有効に使えるようになる。
「身支度・移動」「掃除に取り組む」「見返し・あいさつ」という時間の流れで,時間いっぱい使って掃除ができるようになる。
身支度・・・運動着で,うでまくりをする。紅白帽子をかぶり,雑巾を用意する。
掃除に取り組む・・・清掃分担ごとに,手順と分担責任を明確にして取り組む。
見返し・・・やり残しがないか,バケツの水捨てやバケツ周りをしっかり拭いてあるかの見返しをする。
(3)「きれいになったら気持ちがいい」という感覚が培われる。
「きれいにしなさい」という指導ではなく,「きれいな○○は気持ちがいいね」などのように声掛けをし,清掃後を教師が子どもと共に見届けることにより,「きれいになった」という満足感を持ち,清掃後の気持ちよさ・心地よさを感じることができる。
「たてわり清掃」によせる願い
(1)たてわり清掃を通して,良い清掃の姿が広がっていってほしい。
子どもたちが,お互いにがんばっている姿を認め合い,良い清掃の姿から学びながら,よりよい取り組みを求めていく。
(2)清掃への意欲を高めてほしい。
しっかり掃除ができるようになって,たてわり清掃の分担に参加しようとする。
たてわり清掃の班長になって,リードしていきたいという気持ちを育てたい。
(3)高学年を中心に,「自分たちできれいにしている」という自覚や自信を育てたい。
子どもたち一人一人が,自分たちの学校を自分たちの力できれいにしようという意識で取り組み,実際にきれいになっていることを実感することで,自分たちの清掃活動に対して自信を持たせたい。
清掃のたてわり班の編制と分担場所
たてわり班の編制
(1)たてわり清掃班名簿の作成
各学級からの数人ずつの児童により,たてわり清掃の名簿を作成します。
(2)「引き継ぎ会」
たてわり清掃班は,交替の時期が来ると,金曜日に交替します。前々日の水曜日の「朝の活動の時間」に「引き継ぎ会」を行います。旧メンバーと新メンバーが視聴覚室に集まり,それぞれの班ごとで「清掃見返しカード」をもとに,掃除の見返しを引き継ぎます。掃除の工夫や反省点を話し合います。
(3)分担場所での確認
交替前日の木曜日の「朝の活動の時間」に,新メンバーが清掃分担区に集まり,分担場所や清掃用具を実際に目で見て,掃除の手順や工夫などを現場で確認します。
(4)交替当日
交替当日の清掃の時間から,いよいよ新メンバーでの掃除が始まります。時間よりも少し早めに分担場所に集まり,引き継いだことや前日確認したことをもとに,まず取りかかってみます。そして,この交替初日に見返したことを,毎日の見返しに生かしていきます。
全校たてわり清掃の分担区
全校児童の共用の場所を掃除しています。
たてわり清掃班の分担場所として,児童昇降口,B棟・C棟の廊下と階段,みどり廊下(体育館脇の外廊下),視聴覚室の他に,季節に応じて校地内の草取りや落ち葉集めも行っています。
「児童昇降口上・下」,「B棟廊下」,「A棟階段」,「B棟階段」,「視聴覚室」の班長は6年生ですが,「C棟廊下」,「C棟階段」の班長は5年生,「みどり廊下東・西」の班長は4年生がつとめています。
一部たてわり清掃の分担区
音楽室と図書館を3,5年生で,コンテナ室,家庭科室,図工室,第1会議室,第3会議室を2,4年生で,1年生教室は1,3年生が担当しています。
なお,これらの分担は,『なかよし学級清掃』ともよんでいます。
特に,1年生教室の取り組みについては,『清掃留学』とよんでいます。1年生数人が,3年生のなかよし学級の教室へ清掃(留学)に出かけていき,掃除の仕方を勉強してきて,それを自分の1年生教室掃除に生かしています。
「たてわり」で行う意義
清掃活動を通して,自分より小さな,あるいは大きな者とかかわり,掃除のやり方を教えたり,教えられたりすることは,子どもの社会性を高めるために欠かせないと考えたからです。
上級生にとってのたてわり清掃の意義
上級生は,自らが「下級生のお手本になって掃除に取り組もう」と意欲を持ちます。身支度を整え,腕まくりをして準備をします。そして,下級生の隣に並んで,一緒に掃除をしながら,下級生の取り組みのよさを見付けて認めていく姿が見られます。
ほうきの使い方を教える
ほうきの持ち方・はき方をわかりやすく説明し,上手になるとほめてあげています。
雑巾のかけ方を教える
雑巾の3つのかけ方も,実際にやってみせています。
「通しがけ」では,雑巾のゆすぎ方・しぼり方から説明して,雑巾のたたみ方,両手の置き方から通しがけのやり方までを実際にやってみせています。
「仕上げ磨き」は,隣に並んで,いっしょにやりながら説明しています。
「四角磨き」も,隣に並んで,教室の床のマス目ごとに四角く磨くのを実際にやってみせています。
このようにして,上級生は,お手本となるようにしっかり取り組み,リーダーとして「教える」という立場で取り組むことで,学ぶところも大きいと思います。
下級生にとってのたてわり清掃の意義
下級生は,上級生の説明を聞いて,少しずつ覚えながら,掃除のやり方が上手になっていきます。
ほうきの使い方が上手になる
ほうきではくことは意外に難しいものです。はいたところとはいてないところを意識しながら,ほうきの穂先をしっかり使ってはくときれいになります。上級生といっしょにはくことを繰り返しながら,次第に上手になっていきます。
雑巾の扱いがよくなる
上級生から雑巾のかけ方を教わり,「雑巾がけをしてきれいにしよう」と意欲を持ちます。また,上級生の声掛けにより,バケツの周りにこぼれた水をきれいに拭き取ったり,雑巾をしまう(自分のイスのひもにかけて干す)こともきちんとできるようになります。
見通しを持って取り組めるようになる
はじめのうちは,上級生の指示に従って取り組んでいますが,掃除の手順を教えてもらいながら,下級生も自分で見通しを持って取り組めるようになっていきます。
さらに,上級生が真剣に取り組む「後ろ姿」から学ぶところが大きいです。
また,「上級生は下級生のことを考えて」,「下級生は上級生のことを考えて」取り組むことで,他人に対する思いやりの気持ちが育つことにもつながると思います。
【清掃留学】(なかよし学級清掃)
なかよし学級でのたてわり交流活動として,なかよし学級(姉妹学級)をもとにして,なかよし学級の教室掃除も行っています。
特に,1年生教室の担当を『清掃留学』とよんでいます。
1年生と3年生のなかよし学級同士で,教室掃除のメンバーを一部入れ替えています。
具体的には,1年1組教室掃除の一部の子どもたちが,3年1組教室掃除に出かけています。逆に,3年1組教室掃除の一部の子どもたちが,1年1組教室掃除に出かけています。このことにより,どちらの教室も3年生がリーダーシップを取って,時間いっぱい使ってそれぞれの教室を磨き上げています。
4月当初は,3年生が1年生教室を掃除していました。1年生が「おそうじの学習」をしながら,徐々に掃除のやり方を覚えてきました。最終的には1年生だけでできるように,人数を減らしてきています。
1年生の子どもたちから見ると,3年生の教室に留学して,お掃除のやり方を勉強してきて,1年生教室の掃除に生かすというところから,『清掃留学』とよばれるようになりました。
このようにして,1年生は3年生の教室の掃除をしながら,ほうきやちりとり,ちりぼうき(小さな手持ちのほうき)の使い方を覚えたり,雑巾の3つのかけ方(通しがけ,仕上げ磨き,しかく磨き)を覚えたりすることができます。
一方で,3年生は,1年生とかかわりながら掃除をすることで,下級生への接し方を学ぶことができます。
同様のことが,3年生と5年生,2年生と4年生の間で,特別教室等の清掃分担区での掃除の交流が行われています。
たてわり清掃活動のよさ
かかわりの様子を見ていると,たてわり清掃の班が交替した直後は,ぎこちない雰囲気もあります。けれども,毎日清掃をしていくうちに自然なかかわりが見られるようになっていきます。
たてわり清掃を始めて,たくさんの成果がありました。
(1)「よさ」その1《時間よりも早めに行く》
1年生や2年生のたてわり清掃の子どもたちは,たてわり清掃が楽しくて,時間よりも早く分担場所に行って,時間になるのを待っている姿も見られます。
(2)「よさ」その2《上級生がお手本に》
掃除のやり方を教えるために上級生が「お手本」になることを意識して,しっかり腕まくりをして,1,2年生の隣に並んで,ひざをついてしっかり雑巾がけをしてみせている姿も見られました。
(3)「よさ」その3《黙って静かに取り組む姿に》
子どもたちは,ほとんどおしゃべりもせず,黙って静かに掃除に取り組んでいます。
「黙ってやりましょう」というように「無言清掃」をねらっているわけではありません。
子どもたちが,毎日の掃除を見返したり,工夫をしたりしながら,一生懸命に掃除に打ち込んだ結果,黙って静かに取り組むようになったのです。
(4)「よさ」その4《全校が黙って静かに取り組む姿に》
たてわり清掃班に出かけて,黙って静かに取り組む態度が身に付くと,交替の時期が来て自分の学年・学級の分担場所になっても黙って静かに取り組むので,黙々と取り組む姿勢が全校に広がりました。
清掃時は,校舎内のどこの分担場所も,黙って静かに取り組めています。本当にすばらしい姿だと思います。
(5)「よさ」その5《他学年と仲よくなる》
清掃の時間以外に,休み時間などで廊下で行き会うと,手をふったり,声を掛け合ったりする姿も見られます。
学年の壁を越えて,お互いが知り合うきっかけになります。
本校の子どもたちは,「たてわり清掃」を軸にして,毎日「筑摩小学校」をピカピカに磨き上げようとはげんでいます。
と同時に,自分の心も磨き上げ,日々向上しようと努力しています。