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西善寺の名号雨乞軸
(読み方)さいぜんじ の みょうごう あまごい じく
西善寺名号雨乞軸
- 指定等区分 松本市重要有形民俗文化財
- 指定年月日 昭和55年(1980年)3月18日
- 種別 民俗資料
- 所在地 松本市和田境1317
- 所有者 西善寺
祈りの精神あふれる名筆
もともとは松本城下・清水の念来寺の所有でしたが、明治の廃仏毀釈の際に他の仏像類とともに西善寺へ移されたと考えられています。本山・淨発願寺の空誉上人(1637年~1694年)の筆による元禄6年(1693年)の大作で、全長6.7m、軸幅は1.5mあり、雨乞名号軸として本山に次いで日本で二番目に大きい巨軸です。
名号軸には「 一之澤 山居 南無阿弥陀仏 (花押) 空誉木食上人(印) 」と書かれており、一之澤とは淨発願寺の地、山居とは初祖彈誓(1551年~1613年)が修行でこもった佐渡壇特山・真更川山居の聖地の地名にちなんでいます。空誉の書風は水準の高い唐様(中国風)で、書には風をはらんだ力強いスピード感とともに、ぐっと手ごたえを感じさせる明系統の粘り強さがあり、その見事さは様式や技術を超えたすさまじさにあります。「どうしても雨を降らすのだ」という激しい祈りの精神は、墨線のうねりとなって墨の飛沫をあげてひた走っています。日本書道史の流れの中では、禅墨跡に比肩する宗教性の高い名筆といえます。
本山の場合は祈祷のおり、一日目は「南」の一字が開かれ、その瞬間村人たちは一心不乱の念仏を合唱し、その日に雨が降らなければ翌日は「無」までというように、連日祈祷と念仏の合唱を繰り返す、農民の暮らしと密着した存在でした。念来寺の場合は箱書に「但し此名号を開くこと不許。極めて旱魃(かんばつ)の時開きて祈る」とあり、めったに開かれなかったらしく真新しい状態で保存されています。西善寺に移って以来、雨乞いに用いられたことはありません。農民の暮らしと密着した祈りの精神があふれる名筆として、松本地方天台律宗の中心であった念来寺の歴史を語る上でも貴重な資料です。