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里山辺追倉のお八日の綱引き
(読み方)さとやまべ おっくら の おようか の つなひき
里山辺追倉のお八日の綱引き
- 指定等区分 市重要無形民俗文化財
- 指定年月日 平成8年(1996年)2月8日
- 種別 風俗習慣
- 所在地 松本市里山辺薄町追倉
- 所有者 里山辺追倉のお八日の綱引き頭屋
龍にこめられた豊穣の祈り
大久保姓五軒で伝承される
「追倉」と書いて「おっくら」と読みます。この集落は、里山辺の北東に位置し、入山辺と境を接しています。南向きの急な斜面に、大久保姓の五軒が住んでいます。
追倉の綱引きは、入山辺のいくつかの集落の行事と同様、2月8日におこなわれる厄を送り豊穣を願う行事です。
8日の早朝、各家では、ヌカエブシなどといって木戸先で籾殻(もみがら)、唐辛子、毛髪などをいぶしたり、餅をつき、村境にある道祖神碑に供えたりします。また、この日は山道具や農機具にも餅を供えたりします。
午後、村中の大人も子どもも皆頭屋に集まります。男性が持ち寄った藁(わら)で網撚(よ)りをして「龍」を作り、その間、女性は精進料理を作ります。できあがると座敷に龍を持ち込んで、南無阿弥陀仏の掛け軸の前に飾り料理を供えると共に、皆で料理を食べます。料理は粗食に甘んじ、奢(おご)ることのないように先祖代々伝えられてきているといいます。
必ず女性が勝つ綱引き
食事がすむと、車座になり、龍を数珠(じゅず)代わりに念仏を唱えます。それが終わると、男女に分かれて綱引きをおこないます。女性が勝つと、その年の五穀豊穣、無病息災が確約されるといいます。勝つのは、毎年必ず女性です。
最後に男性が村境まで龍を運び、村の守り神である道祖神碑に奉納するように巻きつけ、お参りをします。村人の祈りをこめられた龍は、守護神となって、一年間村を見守ります。
戦後末期、武田氏にゆかりのある武士が住み着いたという伝承のこの地で、お八日の綱引きは300年以上にわたって伝えられています。