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旧海岸寺経塚出土品
(読み方)きゅう かいがんじ きょうづか しゅつどひん
旧海岸寺経塚出土品
- 指定等区分 松本市重要文化財
- 指定年月日 平成7年(1995年)4月28日
- 種別 考古資料
- 所在地 松本市丸の内4-1
- 所有者 松本市(松本市立博物館)
- 時代区分 平安時代
地中に埋められた末法への祈り
これらの遺物は、昭和10年代の終り頃に、入山辺地区の弘法平とよばれる旧海岸寺の寺域から少し登った尾根上から山内勝氏により発見されました。経塚(きょうづか)の出土遺物であり、青銅製の経筒(経典を入れる道具)、白磁合子(はくじごうす)、鉄製刀子(とうす)が一緒に出土しました。経塚は、平安時代末期、末法思想の広がりと共に、主に貴族の間で造立されたもので、仏法の滅亡に備え教典を地中に埋納したものです。
旧海岸寺の寺域から出土した経筒は、ロクロの加工痕のある青銅の鋳造品で、製造年代の記銘はありませんが、東京国立博物館の鑑定により平安時代後期のものと推定されます。本例のように本格的な経筒が白磁合子を伴って発見されたのは県内でもあまり例がありません。
松本市域ではこの旧海岸寺のもののほか、かつて牛伏寺(ごふくじ)が所在していたといわれる鉢伏(はちぶせ)山中腹から銅鋳製の経筒や、鉄磬(てつけい)と鉄剣5口及び鏡の一部(いずれも市重要文化財指定)が出土しているほか、放光寺裏からは石製経筒が出土しています。こうした経塚の存在から、平安時代末期から松本平においても末法思想が広まっていたことをうかがうことができます。