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牛伏川堰堤〔4基〕

更新日:2021年12月20日更新 印刷ページ表示

(読み方)うしぶせがわえんてい(だいにごうえんてい~だいごごうえんてい)

  • 指定等区分 登録有形文化財
  • 登録年月日 令和3年(2021)10月14日
  • 種別    建造物
  • 所在地   内田山6114番地9
  • 所有者   長野県
  • 時代区分  明治時代

明治期につくられた県内最初期の石積堰堤

牛伏川は、犀川水系奈良井川支流田川の支渓であって、諏訪地域と境をなす標高1,670mの横峰の西面を水源とする。田川に合流するまで下流域では半径約3kmの典型的な扇状地を形成するほどの土砂流出の歴史を有し、天井川となって田川へ合流している。
地質は、広い範囲で石英閃緑岩ないし花崗閃緑岩からなり、断層などが強く発達することから、風化が進み、斜面崩壊の素因となっている。特に下流の地域では、土砂を伴う洪水が頻発し、左岸の地域では地域が全滅するほどの被害も発生、さらには松本市の中心部まで影響を与えていた。
明治維新後、信濃川、千曲川を管轄した内務省は、治水のためには上流域での土砂流出を抑えることが必要と考え、明治15年頃から長野県内各地で砂防工事に着手する。明治18年には、牛伏川の南に平行する塩沢川に石積えん堤を築造し、次いで、牛伏川に本格的な石積みえん堤の施工を開始する。明治44年の内務省記録「内務省工事履歴」によれば、牛伏川には石積みえん堤は、全部で5基設けられた。

牛伏川第二号堰堤

内務省2号えん堤は、合清水沢合流点の本流に設けられており、高さ(下流の河床から水通し頂部まで)6.5m下流勾配は1:1.31、堤長は24.5m以上、水通し幅が15.7mと内務省えん堤で最大規模である。
このえん堤の最大の特徴は、水通し部が幅約3.5mは認められるが、下流の法面から曲線的に施工されていること、水通し部と接する袖部も同調的な曲線形状をなしている。石の大きさは、30cm~80cmであるが、全体としては内務省えん堤の中では径が小さい。見逃せない点として、えん堤下流の河積の狭小部に人工的な巨石積みがあり、下流の河床低下を防ぎ、結果的に2号えん堤の安定性を高めている。
以上のように、2号えん堤は、石積みの安定性、下流の工夫、水通しの曲線的な形状など内務省えん堤の中でも際だった特徴を有している。

牛伏川第三号堰堤

内務省3号えん堤は、2号と4号の中間に位置し、高さ8.2m、堤長22.2m、下流勾配が1:1.27である。特に高さが内務省えん堤で最大であり、勢いよく流れ落ちる水勢は迫力がある。
このえん堤の役割は、急こう配の河床を緩和することに加え、流れの方向を修正することと考えられる。そのことは、水通し部と袖部の区切り形状が左右岸で異なり、右岸ではやや上流側に開いたような形状を呈し、流れの向きを修正している。さらに、下流に続く右岸の護岸が直線的に設けられていることとも整合する。
こうして上流での堆砂効果と下流への水流を直線状に修正できていることから、上下流とも隣接する斜面の足元を保護し、崩壊を防いでいるとみられる。

牛伏川第四号堰堤

内務省4号えん堤は、二大源流である日影沢と泥沢の合流点下流に設けられ、その規模は、高さ7.0m、堤長19.7m、下流勾配は1:1.28である。石積みの石材は、50cmを超えるものがほとんどで巨石が目立ち、水通し部などでは長径が1mをこえており、内務省えん堤の中でも最大である。
えん堤の直下流には、石を平積みした横断構造物がみられるが、これは下流の洗掘を防止するための水叩き的な役割を有する構造と推測され、内務省えん堤の中では唯一である。また、施工位置右岸には、基岩が露出していることから、えん堤の安定性を考慮して施工位置を決めた工夫がみられる。
上流側は、後に県砂防工事でつくられる石張水路と隙間無く接合されており、一体となって合流後の本川の流況を安定化させている。

牛伏川第五号堰堤

内務省5号えん堤は、唯一支流合清水沢に設けられており、高さ7.8m、堤長17.5m、下流勾配が1:1.21である。本流のえん堤と比べその規模がやや小さいが、水通しの形状などは2号えん堤に類似する特徴をもつ。
支流合清水沢の源流は、横峰に連なる諏訪境の尾根まで達し、支流でも大きな流域を有する。このため、土砂生産や洪水量が大きいことから、本流に合流する直前に河床の安定と水勢の抑制を図ったとみられる。
現在、5号えん堤の上流側には緩勾配の河床が形成されており、支流へのえん堤設置効果が明瞭に確認でき、本流の2号えん堤の安定性にも寄与している。このページのトップに戻る


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