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風致保全方針
平成29年2月22日付けで松本市風致保全方針を策定しました。
策定の趣旨
風致地区制度は、都市の自然的景観を維持し、緑豊かな都市環境の保全に寄与することを目的に定められ、本市では昭和15年に「松本城址風致地区」、「城山風致地区」、「浅間風致地区」を指定し制度運用を図ってきました。
平成27年4月1日より長野県から権限移譲を受け、これまで守り育ててきた風致地区制度を引き継ぎ、本市が制度運用を図っています。
地区内の自然状態を保持している地域を第1種、既に市街地として開発されつつある地域を第2種として種別を指定しています。
「松本市風致地区条例」では種別に応じた規制を行うため、これまでの長野県の規制と同様に、種別ごとに建築物の高さ、建ぺい率や壁面後退距離、敷地内の緑地率等の許可基準を定めるとともに、地区の風致と著しく不調和とならないことを求めています。しかし、個々の風致地区の特徴は多様であることから、風致地区内における行為の許可等の運用については、風致の維持を図るうえで、地区の実情に応じたきめ細かな対応を図ることが必要になります。
風致保全方針を定めることで、風致地区ごとに維持すべき風致の特徴を明らかにし、風致地区制度の的確な運用を図るものです。
対象の風致地区
- 松本城址風致地区
- 城山風致地区
- 浅間風致地区
風致保全方針に定める事項
- 風致地区の特性及び課題
- 保全目標
- 規制に関する事項
- 風致を維持・創出するための施策の方針
松本市風致保全方針
松本城址風致地区保全方針
風致地区の特性及び課題
本地区は、松本城天守を中心とした二の丸及び外堀、片端町の総堀を区域とし、市民に安らぎを与える緑の拠点としての役割を担ってきた。
松本城本丸及び二の丸は、一部を除き昭和5年に史跡指定され、その後、昭和29年に中央公園(平成14年に名称を松本城公園に変更)として都市計画公園に指定している。
北アルプス、美ヶ原高原等の山並みを背景に四季の変化をつくり出しており、春は満開の桜、初夏の藤の花、盛夏の堀の涼、秋の紅葉、そして冬の雪山の峰々と、四季を通じて歴史的建造物と調和した美しい眺望景観が形成されている。今後も、地区内から望む美しい東西眺望景観を保全すると共に、地区の外から眺める景観にも配慮した公園の整備や樹木の管理が必要となる。
歴史的遺産である松本城天守5棟は、天守を中心に乾小天守、渡櫓、辰巳附櫓、月見櫓の5つの建物で構成されている。現存する5重6階の天守としては最古であり、日本を代表する城郭建築である。昭和11年には「国宝保存法」により旧国宝に指定され、さらに、同27年に「文化財保護法」により国宝に再指定されている。明治以降には取り壊しや倒壊の危機を迎えたが、そのたびに市民が力を合わせ保存されてきた全国でも稀にみる人々に愛され続ける城郭であると言える。
また、隣接して松本城主戸田康長を祀った松本神社や社(しゃ)叢(そう)があり、敷地内の井戸から湧き出る清らかな湧水は、多くの人に親しまれ、その流れは重厚な城郭と調和した歴史的景観を形成している。
第1種風致地区は、市民の理解と協力によって整備されてきた歴史的景観の維持向上のため、明治時代以降に失われた、松本城の城郭を形成していた建造物、堀等について史実に基づいた整備を行うとともに、市民が集い憩える公園整備に取り組む必要がある。
第2種風致地区は、風致地区指定当時に総堀であった区域が埋め立てられ、駐車場や住宅用地として利用されているが、松本城内という認識を共有し、趣ある街並みを形成する必要がある。
【概要版】松本城址風致地区保全方針
城山風致地区保全方針
風致地区の特性及び課題
本地区は古くから山城が築かれ、犬飼氏の居城があった場所である。江戸時代後期に開園した城山公園を含む市街地近郊の貴重な丘陵地一帯を区域とし、人々に潤いと安らぎを与える場となっている。市街地を望む南側斜面には緑豊かな住居地が形成されている。
第1種風致地区内の城山公園は歴史が古く、天保14年(1843年)に松本藩主戸田光庸(みつつね)が、弓の練習場などがあった城山に数千本の桜や楓を植栽し、庶民に開放したことが始まりとされ、日本の公園の先駆けとなった。明治8年(1875年)には、当時の筑摩県によって公園に指定され、松本で最初の公園となった。園内には桜の他に赤松、サツキやツツジなどが植えられ、季節の変化を感じる美しい公園である。地区内には国の登録有形文化財の城山配水地旧配水池や放光寺等の歴史的建造物が点在している。丘陵中腹にある放光寺は平安時代初期の創始と伝えられ、寺の名前が地名の由来となっている古刹である。境内には四季折々の花が咲き誇り、梅、桜、花桃、山吹、ぼたん、花菖蒲、紫陽花、萩等が訪れる人の目を楽しませている。これら美しい丘陵地一帯は古くから市民に親しまれ、自然景観と調和した趣ある風致を形成している。今後も、この美しい自然景観を保全し継承していく必要がある。
また、良好な自然景観を構成する城山の丘陵地は、展望地としても市民に親しまれており、丘陵地一帯からの美しい眺望景観は昭和15年の松本都市計画風致地区指定理由書に「東南、白壁の松本市街は脚下にあり、美ヶ原はじめ筑摩アルプス連峰は陽に映え(中略)日本アルプスは千古の白雪を戴き、眺望の雄大壮麗は「山の信州」の粋を集めたり。」と記されている。現在も眺望景観が維持されていることから、丘陵上部の展望地、市街地を見通せる道路においては、眺望に配慮した樹木の管理が必要となる。
第2種風致地区は風致地区指定当時、大半が桑畑や果樹園などの農地であった。現在では過半が住居地となっているものの、周辺の市街地と比べ緑豊かな住居地を形成している。
しかし、新規の宅地造成地では、樹木が未成熟、または少ない状況にあるため、既存の緑豊かな住居地景観と調和を図る必要がある。
【概要版】城山風致地区保全方針
浅間風致地区保全方針
風致地区の特性及び課題
本地区は、開湯が天武年間と言われる1300年の歴史を誇り、情緒ある浅間温泉街と東山の豊かな自然が一体となった慰楽地として、人々から愛されている。
第1種風致地区は、浅間温泉の背景となる大音寺山、御殿山等の東山一帯を区域とし、地区の大半は赤松等に覆われた緑豊かな自然景観を形成している。
本地区は幾度となく山地災害に見舞われてきた歴史を持ち、明治29年の長雨による土砂災害では温泉街に甚大な被害を受け、平成14年の山林火災では大音寺山の森林約170haが消失する県内では戦後2番目の規模となる被害が発生している。このような背景から、山地災害を防止するため、地区内森林の大半が保安林に指定されている。
今後は山林火災で被災した森林再生や、松枯れへの対応等を市民との協働により取り組む必要がある。
地区内に点在する寺社の境内にある樹木は心地よい緑陰をつくり、その太い樹幹は長い樹齢を窺わせる。初夏に色彩豊かな牡丹が咲き誇る玄向寺の境内や秋の紅葉が美しい神宮寺・御射神社春宮では市民により育まれた草花が四季折々の美しい景観をみせている。
また、地区内には浅間温泉天満宮、横谷入城址、眞観寺址、桜ヶ丘古墳、女鳥羽の滝等数々の名所・旧跡も多く点在し、北アルプスや市街地等を一望できる見晴し台などの展望地も多数ある。御殿山には城下町松本の礎を築いた小笠原家の城主小笠原貞慶(さだよし)と秀(ひで)政(まさ)・忠(ただ)脩(なが)父子を祀った廟所(びょうしょ)があり、玄向寺は6代82年に渡り松本城主を務めた水野家城主の水野忠(ただ)清(きよ)、忠(ただ)職(もと)、忠(ただ)直(なお)、忠(ただ)周(ちか)、忠(ただ)幹(もと)を祀った廟所を有する寺である。これらは市特別史跡に指定され、周辺の樹木と一体となった優れた慰楽地の環境を形成していることから、今後も保全する必要がある。
第2種風致地区は風致地区指定当時、大半が農地であったが、現在では温泉街と一体となった住居地を形成している。今後も、東山の自然景観や歴史ある温泉街と調和した落ち着きある住居地景観の保全を図っていく必要がある。
【概要版】浅間風致地区保全方針
松本城址風致地区について
決定当時の様子
昭和15年(松本城公園)
平成27年(松本城公園)
昭和15年(松本城惣堀片端付近)
平成27年(松本城惣堀片端付近)
主な特性
北アルプス眺望景観
東山眺望景観
外堀と樹木
太鼓門
松本神社と樹木
松本神社の御神木
北馬場の井戸
松本神社前井戸
城山風致地区について
決定当時の様子
昭和15年(城山遠景 松本城天守より)
平成27年(城山遠景 松本城天守より)
昭和15年(城山正麟寺付近)
平成27年(城山正麟寺付近)
主な特性
丘陵緑地全景
城山公園
城山配水池旧配水池
放光寺
城山公園展望台から松本市街地への眺望
市街地を見通せる道路1
市街地を見通せる道路2
緑豊かな既存住宅地1
緑豊かな既存住宅地2
緑が連続した既存住宅地1
緑が連続した既存住宅地2
住宅地周辺の農地
浅間風致地区
決定当時の様子
昭和15年(浅間全景 神宮寺より)
平成27年(浅間全景 神宮寺より)
昭和15年(浅間神宮寺付近)
平成27年(浅間神宮寺付近)
主な特性
東山全景
東山の森林1
東山の森林写真2
東山の保安林
国有林の遊歩道
小笠原家廟所
浅間温泉天満宮
水野家廟所
玄向寺
東山の山裾
温泉街の周辺
緑豊かな生垣
自然景観と調和した住宅1