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旅館すぎもと松軒楼
(読み方)りょかんすぎもとしょうけんろう
- 指定等区分 登録有形文化財
- 登録年月日 令和6年(2024)3月6日
- 種別 建造物
- 所在地 大字里山辺字湯原451-7他
- 所有者 合資会社 旅館すぎもと
- 時代区分 昭和時代
温泉街の景観をつくる旅館建築
旅館すぎもとは、東部山裾の湯ノ原、通称美ケ原温泉郷に位置し、湯治場として長らく親しまれてきた。敷地は、領主が入浴保養逗留する御殿の湯、山家(山辺)茶屋が設けられた場所の一部である。歴史ある御殿の湯焼失後に山辺温泉旅館協同営業組合が建てた山辺ホテルが取り壊され、跡地の一部に建てれらた旅館すぎもとは、新築当時の絵葉書に『旧御殿 内湯旅館 壽喜本』と表記されている。
松軒楼は旅館すぎもとのいわゆる本館で、木造3階建てで、瓦葺き入母屋の屋根と真壁の外壁に横長の開口がとられ、そこに欄干が巡らされた、昭和初期の温泉旅館街に多く建てられた意匠の建築である。施工は地元(当時波田村)の宮大工系工務店で、寺社仏閣など伝統建築を多く手掛けていた合資会社雲井商会である。耐震補強、防火対策などにより変更されているが、もともとの雰囲気を大切にして温泉街の風情を壊さない努力が認められる。昭和38年の改修工事には古民家再生で知られる降幡廣信氏がかかわっており、氏の設計事務所設立年の初期の仕事となる。
旅館すぎもと松軒楼は、昭和初期に多く建てられた温泉旅館の特徴を色濃く残す、今では希少になりつつある木造三階建ての旅館建築である。