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松本市の水道事業は、大正12年9月に給水を開始し、令和5年に100周年を迎えます。
一方、私たちの生活において「当たり前」となっている水道ですが、近年は人口の減少や節水機器の普及によって、料金収入が落ち込み、苦しい経営状況に陥っています。
この状況を乗り越えるために行っている、水道事業の取り組みを紹介します。
松本市の水道事業は、大正9年に、国から創設認可を受けたことに始まり、大正12年9月に一部給水を開始しました(県内では3番目の認可)。
当時の給水人口は約60,000人。これは、現在のおよそ4分の1で、市街地の一部を給水していました。
旧城山配水地の建物(右の写真)は、水道の黎明期に建設されたレンガ造りの配水地です。こうした歴史的価値のある配水地が現存している例は、全国的にも珍しく、国の有形文化財に登録されています。
創設当時は、市街地の一部を給水するのみでしたが、都市化と共に、給水区域を拡大しました。昭和49年からは、県が運営する松塩水道用水から受水するようになり、これにより、自己水源と県からの受水によるハイブリッド式の給水が始まりました。
古くから豊富な湧水に恵まれ、自己水源を整備してきたことが強みとなり、万が一、災害や事故等によって、どちらかの給水がストップしても、水の供給が止まらない、強靭なバックアップ体制が整備されています。
水道事業は、令和3年度末で20年連続の黒字決算となりました。
しかしながら、人口減少に伴う料金収入の減少、労務費の上昇や物価高による費用の増加によって、四半世紀ぶりの厳しい財政状況に直面しています。
※一般的なコップ1杯(200ml)に置き換えると、記載の額の5,000分の1です。
そういった状況だからこそ、無駄な費用を減らすための取り組みが、とても重要になっています。
特に、水道管の漏水は、高額な経費をかけて取水・浄水・配水した水の浪費であり、経済的な損失に直結するものであるため、漏水対策は、水道事業において最も重要視される施策の一つです。
地中の漏水を発見するためには、漏水の音を聴き、場所を特定することから始めます。
松本市の全域には、1,800キロメートル以上の水道管が布設されていますが、全ての水道管の音を聴いて回るのは、途方もない作業です。
漏水を発見した後は、早速、漏水修理に取り掛かります。
修理工事は、勢いよく吹き出す水との闘いになりますが、工事中、近隣の地域が断水になってしまうため、少しでも早く使えるよう、迅速で確実な修理が求められます。
漏水調査や修理は、日々の地道な活動によって、将来にわたり大きな効果を生むものです。
漏水を見つけた場合は、ぜひ上下水道局にご連絡ください。
水道管の法定耐用年数は約40年とされていますが、一般的に1.5倍の60年を経過したものを老朽管といいます。
今から60年前の昭和30年代までは、普通鋳鉄管(ふつうちゅうてつかん)が使われていましたが、継ぎ目から漏水しやすい、管内に錆が発生しやすい等の問題があるため、特に優先的な更新が必要です。
普通鋳鉄管は、計画的な更新工事により、令和12年頃までに全て更新できる見込みです。
工事中は、断水や交通規制等でご迷惑をおかけしますが、ご理解とご協力をお願いします。
水道事業の収入のほとんどは、利用者の皆さんからの料金収入です。99.6%以上の方に納付期限内にお支払いをいただいており、これが水道事業の安定的な資金運用の基盤となっています。
一方、多くの人にとって「当たり前」の水道は、管の老朽化や人口の減少によって、維持管理していくことが困難な時代を迎え、その「当たり前」の常識は揺らぎ始めています。
これからも水道が「当たり前」のものであるために、更なる経営の合理化、効率化を図っていきますので、引き続き、水道事業へのご理解とご協力をお願いします。