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移住者インタビュー(クックさん)
クックさん(アメリカ・シアトルから移住/4人家族)
幼少期から国内外を転々とされた奥様と、アメリカ・シアトルで生まれ育った旦那様。
「子供のそばにいたい」という思いから、移住を機に自営業を始められたお2人は、現在、縄手通りでカフェとゲストハウスを営んでいます。
カフェとゲストハウスは、それぞれ「移住者が営むお店MAP」と「移住者が営むゲストハウスMAP」にも掲載しています。
▲(写真1枚目)Storyhouse Cafe & Bar(1階)、Nawate Guesthouse(2階)
▲(写真2枚目)クックさんご夫妻
Q. 移住されたのは、いつですか?
2016年2月です。もうすぐ10歳になる娘と6歳の息子がいます。
移住してきたときは娘と3人家族で、松本に来てから息子が産まれました。
Q. 松本に移住するまでの経緯を教えてください。
直前はシアトルにいました。
生まれは福岡なんですけど、親の転勤で生まれてすぐ北京に2ヶ月、浦安市に3歳まで、シンガポールに7歳まで、上海に11歳まで、川崎市に12歳まで、中学校の3年間は上海、高校1年生から大学が横浜です。大学の時に1年間シアトルに留学していて、その時に夫と知り合いました。そのあと横浜で就職して、結婚を機にシアトルに3年住みました。
夫は多少移動しているけど、ずっとシアトルです。
Q. 移住を決めた一番の理由は何ですか?
シアトルで娘を出産して、私達の生活の中で子育てが中心になっていたタイミングで、夫は会社員だったので、朝起きて子供と会えなくて帰ってきたらもう寝てるみたいな。
せっかく二つの文化があっていい環境になりそうなのに、子供の成長を一緒に見れないっていうのが子育てしている感じがあんまりしなくて。
夫もオフィスワークがあんまり性に合わなくて、仕事も変えたいなっていうタイミングでした。
子育てするのに良い環境はどんなものなのかなと考えて、日本かアメリカかってなったんですけど、日本は安全だし、自然に近い環境で子供たちと近い距離で仕事ができたらいいなと思って、自営業をやろうかなと思いました。
場所は、山があるところがいいなとは思っていました。シアトルも結構山が近くにたくさんあって、小さい頃から山登りとかハイキングとかキャンプとかが大好きで、そういうのもやりたいなと思っていました。
北海道とか九州もいいかなと考えましたが、最終的には実家(横浜)から一番近い長野県内がいいなと思いました。
松本市は、街のサイズ感とか、自然との距離と街のバランスっていうのがすごくいいなと思っています。環境的にもシアトルと似ていて、車で1時間も行けば大自然があるけど、街は街として成り立っている。
自分たちがやろうと思ったのが「子連れでも来やすいカフェ」で、子育て世代も多くいる街というところで松本にしました。
実は2年前に母も松本に移住してきたんですよ。
▲松本ぼんぼんを楽しむクックさんご家族
Q. 移住前の情報収集はどのようにしましたか?
長野県は縁もゆかりもなかったんですけど、友達が諏訪(※1)に住んでいました。
その友達も自営業で、デザイナーをフリーランスでやっていて、シアトルに遊びに来たタイミングで「カフェやろうと思ってるんだよね」と話をしたら、その人の周りは自営業の人が多くて、子育てもしている人が多いって話を聞いて。
諏訪にちょっと泊まらせてもらいながら、松本に毎日通って物件探しをしていました。
(※1 松本市から南に40キロ程離れた場所にあるエリア)
Q. 物件はどのように探しましたか?
今の場所にお店を開いて4年半ぐらい経つんですけど、最初3年ぐらい城西(※2)でカフェだけをやっていました。
その物件を最初見つけた時は、歩いて空いていそうなところがあったら、そこの大家さんを聞いたりしました。
お隣さんに「隣の大家さん知ってますか?」って聞いて、「知ってるよ」って、繋いでもらって電話したりしました。
歩いて探した方がいいかもしれない。
(※2 【じょうせい】北松本駅から松本城にかかる地区)
ー ハードルが高そうですが、その時の松本の人の対応はどうでしたか?
「こういうことをやりたいんです」みたいな話をしたら、すごい温かく受け入れて話を聞いてくれました。
住宅街の中にある元々旅館だった物件なんですけど、引っ越してきてからも、皆さんすごくよくしてくださいました。
松本は山に囲まれてるから結構閉鎖的でしょって言われたんですけど、全然そんなことは感じたことないです。
皆さんお野菜とか持ってきてくれるし、夏になると桃とかブドウとか、関東だったらちょっと高級品だよねっていう、嬉しいものもいっぱいもらえます。すごい大きいスイカとか。果物が本当に美味しい。
誰かしら親戚が農家さんみたいな方が多くて、「なんて贅沢な」と思いましたね。
Q. 実際移住してからギャップを感じたことや、不満足ポイントはありますか?
良くも悪くもあると思うんですけど、カフェをオープンするときとか、水道屋さんとか電気屋さんとか業者を探さなきゃいけなかったんですけど、うまく探せなかったんです。
それでどうしようと思って、知り合いに相談したら、「知り合いがいるよ」って紹介してもらって。紹介で成り立っている世界にびっくりしちゃいました。
日常でも、お店のお客さんと話してて、「もしかして○○さん知ってます?」ってなると急に距離感が近くなったりするなって思っていて。
最初は難しかったですね。知り合いじゃないとだめなのかと思うこともありました。今はそれも心地よいというか、知り合いが増えれば増えるほど、そういうことってあるから。
あと、こんなに寒いのに家の断熱が全然できてなくて、すごくびっくりしました。
アメリカは古い家ほど価値があるので、どの地域も断熱を大事にしているんですが、松本に来たらめちゃくちゃ寒いのに家の中もめちゃくちゃ寒い。
リビングは暖かいけど、トイレに行くときの廊下は寒い、っていうのがアメリカではないから、それが嫌です。
今まで季節は冬が好きで、外が寒いのに家の中が暖かいっていうのが良かったんですけど、今は家が寒すぎて、みんなどうしてるんだろうって。
Q. 松本市で子育てしている感想を教えてください。
子育てしやすいと思います。児童センター(※3)とかたくさんあるし、東京で子育てしていないので分からないですけど、ファミサポ(※4)とか大変だったら助けてくれるような環境は揃っているなっていう印象がある。
今は娘が小学生で、インターナショナルスクールに通っていて、息子は公立に通っているんですけど、公立だったり、附属や私立やインターナショナルスクールがあったり、選択肢があるっていうことが、すごくいいなと思います。
それぞれの子どもに合った環境の学校がきっとあると思うし、親も子どもも選べるっていう選択肢があるだけで全然違うなって思っていて、それはすごくいいなと思いますね。
あと、アルプス公園(※5)に初めて行った時に、めちゃくちゃびっくりしました。こんな公園が無料で!?って。都内なら1日5,000円くらいするのに。動物園も付いていて、びっくりしました。
(※3 松本市に住む18歳未満のすべてのお子さんが利用できます。詳細はこちら)
(※4 【ファミリー・サポート・センター事業】「子育てのお手伝いをしたい」「手助けをしてほしい」そんな気持ちのある方が会員となり、みんなで子育ての協力をする事業です。詳細はこちら)
(※5 松本市蟻ケ崎にある公園。園内には博物館や小さな動物園、アルプスドリームコースターなどがあります。ホームページはこちら<外部リンク>)
▲ブルーベリー狩りをするクックさんご家族
Q. お店のお客さんは、どういう方が多いですか?
英語に興味がある方が基本的には多い。
ご本人が興味あったりとか、お子さんに英語をやらせたいとかやらせてるっていう方が多いんですけど、それも年代結構バラバラで、もう退職されて「これから旅行に行きたくて英語をやりたいと思ってます」っていう方だったりとか、「仕事で英語を使う機会があるので」とか。
常連さんは、近所のおじいちゃんとかが毎日コーヒーを飲みにきてくれます。前のお店の頃から来てくれる方もいます。
あと、お店をやってみて思ったのは、お客さんがお店に対してすごく距離が近い。
私は関東とかでお店に入っても、店員さんに話しかけようと思ったことがないんですけど、松本の人はいろいろ聞いてきてくれて、それがきっかけで話してお互いに知り合いにもなれるし嬉しいです。
お客さんが人として私達と接してくれているっていう感じはすごくありました。
▲イベント時のカフェ店内の様子
Q. お店では音楽系のイベントもやられているんですよね?
夫がドラムをずっとやっていて、音楽が大好きなので、カフェでもイベントをやりたいと思い始めました。
音楽好きな人たちがそれを知って来てくれるようになって、「こんなにいっぱいいたんだ」みたいな感じ。
最初は松本が音楽の街(※6)って知らなかったので、マッチした感じで、そこは嬉しい誤算でした。
お客さんの知り合いの人がたまたま「使わないピアノあるけどいる?」って言ってくれたり、借りた旅館のところを片付けていたらマンダリンが見つかったり、お客さんがギターを置いていったりとか、そういうので少しずつ増えました。
(※6 松本市は、スズキ・メソード発祥の地であり、セイジ・オザワ 松本フェスティバルに代表される音楽の街としても知られています。また、音楽の”楽”・山岳の”岳”・学問の”学”を合わせた「『三ガク都』まつもと」とも呼ばれます。)
▲カフェ店内にある楽器
Q. 他の移住者の方との関わりはありますか?
市内だと移住してお店をやっている方がたくさんいらっしゃるような気がして、すごくいい風が通ってる。
刺激しあっているというか、閉鎖的な感じはしない。飲食店が多いと思うんですけど、移住しやすいのかなっていう感じがしました。
ゲストハウスをやり始めてから、移住したくて見に来ましたっていう方はいらっしゃるので、そういう方が移住後カフェに来てくれたりとかしますね。
あと、国際結婚なので、国際カップルとか家族が移住したいとかで来てくれることはありますね。そういう時は、学校や生活のことを聞かれます。
そうやって少しでも役に立つっていうか、どうなのかなって思ったときに聞ける場所があるっていうだけでも違うと思うので。気軽に誰でも来られるっていう場所でありたいなと思うし、そういう場所が松本にあるっていうのはすごく大事かなって思っています。
▲クックさんお気に入りの場所(縄手通りにかかる「中の橋」からの風景)