本文
移住者インタビュー(S さん)
S さん(鹿児島県から移住/単身)
転勤や海外留学を経て移住し、現在は松本市役所の職員として働くSさん。
仕事のことから趣味のことまで、興味深いお話をお伺いしました。
▲大好きなクラフトビールのイベントを楽しむSさん(右)
Q. 松本に移住するまでの経緯を教えてください。
出身が鹿児島県の離島です。高校まで離島にいて、大学で鹿児島市に移動して、大学卒業して就職のタイミングで東京に行って、その後転勤で千葉、群馬、長野に住みました。群馬と長野にはそれぞれ1年くらい居て、長野の時は岡谷市(※1)に住んでいました。
岡谷市での勤務を最後にその会社を退職し、その後、ビールが大好きなので志賀高原(※2)にある「志賀高原ビール」の醸造元やビアレストランで1ヶ月半バイトをして、更にその後1ヶ月半、松本市の「tabi-shiro」(※3)というゲストハウスで住み込みで働きました。
そして、その後フィリピンに3ヶ月語学留学し、更にその後台湾に2年間語学留学しました。コロナ禍はずっと台湾にいて、2022年の3月に帰国しました。
松本市に転入したのは2023年の3月です。
(※1 松本市から南に30km程の距離にある市。)
(※2 上信越高原国立公園の一部である長野県下高井郡山ノ内町とその周辺一帯に広がる高原。松本市からは北に約100km程の距離。)
(※3 松本市城西地区にあるゲストハウス。「移住者が営むゲストハウスMAP」にも掲載中。)
― いろいろ気になることはあるのですが、「tabi-shiro」さんで働くことになった経緯を教えてください。
元々私は旅が好きで、旅先だとゲストハウスとかに泊まることが多くて、そこで旅行者の方とか地元の方と話すことが好きなんです。
tabi-shiroさんって結構有名で、ゲストハウス好きの中では「行ってみたい」って思うようなところなんですけど、運よく夏の期間スタッフを募集していて…
そのときは、自分が松本に移住するなんて考えていなくて、興味がある街なので「住んでみようかな」みたいな。
2019年の8月~9月ですかね、フリーアコモデーション(※4)っていう形の1ヶ月半の枠で、住み込みで仕事は1日最大6時間ぐらいっていう働き方でした。
(※4 一般的に、無料でホテルやゲストハウスなどの宿泊施設に泊まるかわりに、業務の一部を手伝う仕組みを指します。)
▲松本城とビール(松本市で毎年9月に開催されているイベント「クラフトビールフェスティバルin松本」での1枚)
Q. 台湾から帰国した後、住む場所の候補はいくつかあったと思いますが、なぜ松本市に決めたのですか?
そろそろ台湾の生活が終わるなってなったときに、これから日本のどこで自分が生活をしようって考えたら、第1候補として松本が浮かびました。
松本市が台湾の高雄市と交流を結んでいる(※5)ことが、一つの大きなきっかけです。
実際に台湾にいたので、何か台湾に関わる仕事ができないかなって思っていたとき、たまたま松本市の職員の募集要項を見たら、「中国語・英語・ポルトガル語ができる方を募集しています」って書いてあったので、役に立てるかなって。
地域に根ざして、地域の方と関われるような仕事、かつ中国語とか台湾に関われるんだったら、役所の仕事がいいかなと思いました。
tabi-shiroさんで働いているときに、松本市の移住推進課が市内のゲストハウスを取り上げてインタビューとかしているのを知って、行政が民間や個人事業主の方を応援して、さらに移住者を増やそうとしているっていう取り組みが面白いなとも思っていたので…
あと、松本の“人”がいいなって思いました。
田舎から出て来たので、東京にいたときももちろん楽しくて、お金を稼いで好きなだけ自分の好きなように使えるみたいなところも魅力なんですけど、松本で地域の人と触れ合うことで新しい世界を見たというか、「東京行かなくてもいいじゃん」みたいな。
松本は私の好きなものが全部完結する場所だなと思いました。
(※5 松本市と台湾・高雄市は、平成26年から交流に向けた協議を重ね、市民の健康の増進、福祉の向上、青少年の健全育成を目的として、相互の交流を推進するため、覚書を締結しました。詳しくはこちら)
▲Sさん談「松本市内のとあるカフェで台湾の展示をやっていた時に、カフェのオーナーさんに台湾の話をしたら、お店の裏からこのレコードを出してきて曲をかけてくれました。その時の1枚です。」
Q. 物件はどのように探しましたか?
ネットです。
その時は台湾から帰国して一旦鹿児島県に帰っている時だったので、不動産屋さんとリモートでやり取りして、11月~12月頃に探し始めて、1月ぐらいには決めて3月に転入しました。
一番の条件は、とにかく職場から近いところがよくて、自転車で動ける範囲がよかったので、もうそれだけですかね。
元々転勤で引越しが多かったこともあって、そんなにこだわりが無くて、変なところじゃなかったらいいかと思って内見はせずに決めてしまいました。
Q. 実際移住してからギャップを感じたことや、不満足ポイントはありますか?
想像より寒かったです。
地元は基本的に10度を下回ることがなかったし、台湾でも南部に住んでいたので温かくて、松本に来るまではずっと温暖な地域に住んでいたので、準備しておけばよかったなと思いました。
引っ越してから羽毛布団や電気ヒーターを買いました。
それまではエアコンしかなかったので、部屋の中でダウンコートを着ていました。
不満足ポイントは、公共交通機関が少し不便なことですかね。
車があれば、近隣の市町村とか山とか川とか遊びに行けるようなところはいっぱいあると思うんですけど、私は車を持っていないので、なかなか行けない。
今のところは、友達から誘ってもらって連れていってもらうことが多いです。
免許は持っているんですけど、10年以上運転していないので怖くなっちゃって。
この前、山形村(※6)に行きたいカフェがあったんですけど、公共交通機関だけだとどう行けばいいか分からなくて、結局友達の車で一緒に連れて行ってもらいました。
運転しないと、地理感というか土地勘もつかみづらい。
(※6 東筑摩郡山形村。松本市の南側に隣接する村。)
Q. 移住してから増えた出費はありますか?
前の会社では家賃補助が多かったりとか、あとは実家とかゲストハウスとかそういうところにいたのと、台湾も安い学生寮にいたので、それに比べると家賃は増えました。
松本は家賃がちょっと高い気がしますね。
あと光熱費も増えました。特に冬は電気を使って暖を取っているので電気代が高いです。夏に比べると倍以上違う。冬は一番高くて1万2,000円くらいで、夏は4,000円くらいでした。(※7)
最近は自炊をするようになったんですけど、その分ちょっとだけ光熱費が上がるけど食費が抑えられています。
(※7 光熱費は、住宅や生活スタイルによって大きく変動しますので、参考程度にお考えください。)
Q. 松本の好きなところ、お気に入りの場所はどこですか?
松本の人はすごくフレンドリーだなと思いますね。それを松本の人に言うと、「いやそんなことないよ、閉鎖的なところだってあるよ」って言われることもあるんですけど、それは全然私は感じないです。
街がコンパクトだからこそ、コアな趣味を持った人とより深く繋がりやすいみたいな。
例えば、クラフトビールとか、お酒が好きな人の中でも更にちょっとオタクっぽいというか、お酒のイベントに行くと、友達の友達が友達になる感じで、「名前は知らないけどよく会うね」みたいな人がいっぱいいて、友達ができやすい。
もし東京でそういうイベントに行ったとしても、隣の人と友達にはならないかもしれない。
あと、ゲストハウスが多いことで、特に移住者とか海外の方の受け入れ体制ができているのかなと思いますね。質が高いゲストハウスが市内に密集しているので、それは旅人にとって嬉しいんです。
お気に入りの場所は、松本城がやっぱり好きですね。通勤のときに毎日見ているけど、いいなと思います。
あと好きな飲み屋さんがいっぱいあります。
銭湯に行って、近くのパン屋さんでパンを買って帰るとか。
お店の情報は基本的に人から聞くことが多いです。出会った人におすすめのお店を聞いたり、ネットだけではたどり着かないような情報も、コミュニティの中でどんどん広がっていく。行った先でまた出会ってみたいな。それが松本のいいところですね。
▲夜の松本城