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水と緑の空間整備事業
整備にあたって
松本市では、地域の魅力が向上し、中心市街地への人口誘導による活性化を図り、本市の特色である湧水がある小公園や多くの人が訪れる市街地の緑化を推進するために水と緑の空間整備事業を実施しています。
都市デザインの取組みのひとつとして、景観への認識を深め、広げるための「いいな」と共感できるプロセスを大切に事業を進めています。
中央公民館の景観講座と連携した取組み
平成27年度は、中央公民館と協力し「過ごしやすいオープンスペースを考える」をテーマに、景観から地域づくりを考える講座で身近な景観の本質について考えました。講座では、まち歩きやワークショップを通じてまちなかの小公園を対象に過ごしやすくなるための改修案を作成し、市は案を参考に水と緑の空間整備事業へ反映しています。
まち歩きの様子
過ごしやすい空間を検討
中町東緑地 「中町らしさ・和風の空間」
「観光客もひと息つける空間(15分位)」「ベンチの配置をランダムに、ベンチの距離も適当に離す」「車道の圧迫感を低減した工夫」「車道側に植栽を設置する」など、大切にしたいことがあげられました。
整備前の中町東緑地
ワークショップの提案
案を参考に整備
整備後の利用状況
伊織霊水前小公園 「小路を抜けると・・・」
整備前 周囲が空地となり閑散とした様子
整備後 植栽により囲われ感を演出
辰巳の御庭 「ゆったり、くつろげるランチ空間」
植栽の新設や不要な構造物等を整理
大名町大手門駐車場 「まちの腰かけ待ち合い・待ち合い場所」
バスに配慮して、植栽とベンチを配置
松本駅前 深志の湧水
植栽で木陰と囲われ感を演出
井戸まわりにベンチを配置
国府町交差点小公園
石を撤去して歩道と一体的に整備
景観講座番外編 「建築家と楽しむ公園づくり体験」
お気に入りの石を持参してワークショップを開催
芝張りや花植えの様子
整備後の利用状況
憩いの場として活用
景観を育む
景観講座の提案を参考にした水と緑の空間整備事業では、講座参加者を対象に「お披露目会」の開催や、番外編でアドバイザーの建築家の方々と小公園のせせらぎづくり体験ワークショップを行うなど、講座からさまざまなコトへ発展するきっかけになりました。
まちづくり推進協議会と連携した取組み
平成28年度は中心市街地のまちづくり推進協議会と連携し、「水と緑の憩いの空間ワークショップ」として、昨年の景観講座の取組みを地域に広げています。ワークショップは憩いの空間を考えることがまちを考えるきっかけにもなっており、結果を参考にして平成28年度から29年度に水と緑の空間整備を実施しています。
中町地区 「水と緑の憩いの空間ワークショップ」
憩いの空間を検討することを目的に中町(蔵のある)まちづくり推進協議会と協力し、中町地区のオープンスペース3ヶ所を取り上げてワークショップ(全5回)を開催しました。地域の皆さんをはじめ、高校生や大学生、奈良井川改良事務所、松本市緑化協会、都市計画家、建築家等、さまざまな方と一緒に水と緑の心地よい空間について検討を行いました。
オリエンテーションの様子
専門家によるまち歩き
私の好きな広場の発表
ワークショップの様子
中町蔵の会館前広場は2班に分かれて検討し、「風が抜ける!人も抜ける!息が抜ける!(フォトスポット)」「中町の中心でくつろぐ・・・。中町であいましょう」というコンセプトになりました。
まとまった案
ワークショップでまとまった提案を参考に市が整備案を作成し、ワークショップ参加者対象にまちづくりサロンとしてお披露目会を開催しました。
お披露目会の様子
ワークショップの提案を参考にした整備案
中町蔵の会館前広場
整備前 全景
樹木とベンチが近接
展示スペース前に自転車と緑
ワークショップの内容を反映した中町蔵の会館前広場の改修後は、滞留する方々が増えて水と緑の憩いの広場として心地よい空間となっています。
整備後 全景
井戸に水盤を新設
木漏れ日の小道となるよう樹木を移植
シンボルツリーを新設
お城周辺地区 「水と緑の憩いの空間ワークショップ」
お城周辺地区まちづくり推進協議会と協力し、将来道路として整備される事業予定地を活用した「憩いの空間づくり」を通じて、将来のまちのあり方や場所の使い方を考えるワークショップ(計3回)を実施しました。
都市計画道路事業予定地の活用
地域の皆さんや松本市緑化協会、松本市木材協会等に協力いただき、仮設の植栽と木製パレットを組み合わせた空間づくりワークショップも行いました。整備後は「ソトパレ」の愛称で松本城前という立地から観光客をはじめとした多くの方が利用しています。
整備前 全景
パレットや植栽の搬入
空間づくりワークショップの様子
説明板を設置
外国語案内
H28 日常的な様子
H28 イベント時の様子
H29 樹木を増やしてレイアウトを変更
(仮称)松本城大手門枡形跡広場
イベント利用時に賑わう広場ですが日常的に憩える空間とするため、愛称を「マスパレ」として仮設植栽や木製パレットにより憩いの仮設空間を整備しています。
整備前 全景
H28 整備後
H29 樹種とレイアウトを変更
植栽のない時期の様子
さまざまな使われ方をしています
お城下町地区 「水と緑の憩いの空間ワークショップ」
心地よい空間を検討するため、お城下町まちづくり推進協議会と協力してお城下町地区のオープンスペース3ヶ所を取り上げ、ワークショップ(全5回)を開催しました。中町地区と同様に地域の皆さんをはじめ、学生や奈良井川改良事務所、専門家等のさまざまな方と一緒に水と緑の心地よい空間について検討を行いました。また、ワークショップのつながりで街なかを流れる女鳥羽川でまちづくりサロンも開催しています。
まち歩き
まちづくりサロン
検討案の発表
まとまった提案
まとまったワークショップの提案を参考に、平成29年度にお城下町地区の整備を実施しました。
下町会館前広場
コンセプトは「フィーリンググルービー 松本の時を楽しむ素敵な時間」にまとまり、喫茶室からは赤いポストや桜、堀を眺める眺望を確保し、井戸周辺はガス灯や心地よい緑陰を楽しむ空間とする案になりました。
増えすぎた物を整理して、井戸の使いやすさや心地よい緑を増やすことを心がけ、魅力的な建物が引き立つように整備しました。
整備前 全景
広場にはさまざまな物があふれている
整備後 全景
物を整理して植栽を増やしました
ガス灯が引き立つようにレイアウト
上土団地前緑地
「和みの空間 日常と非日常の狭間」というコンセプトから、車道と歩道が一体的になって川へ降りやすくなる動線の確保や上土団地の喫茶部分が歩道へにじみ出る様なつながりを持つという案になりました。
豊かな緑のある場所ですが、十分に手入れが行き届かなかったり、緑が多すぎて近寄りにくい環境になっていたことから、既存の樹木が活きる様に低木の再配置等を行いました。
整備前 全景
緑が多すぎて道が分断されている
整備後 全景
全体が見渡せるよう緑を再配置
なわて通り(四柱神社前)
コンセプトは「なわてらす 女鳥羽テラス」となり、川を見ながら涼む、川へ降りる、川辺で過ごすアクティビティにつながる場なわて通りの顔となる場という提案になりました。また、まちなかの井戸の普及によりお堀の水を活用した水景を、観光客が井戸水と間違えることがあるとの意見も出ています。
既存樹木の移植や剪定、水景の石積みを下げることで女鳥羽川が見えるように配慮しました。また、井戸を新設して井戸水を利用できる環境を整えました。「なわて若がえりの水」として地域に親しまれる新しい拠点となりつつあります。
整備前 全景
緑と石積みで女鳥羽川が見えない
整備後 全景
石積みを撤去して井戸を新設
景観への認識を深め共有するプロセスを大切に事業を進めてきました。ワークショップにより、それぞれが新しい気付きや思いを共有し、その思いを整備に反映することでよりよい空間づくりにつながったことや、整備後には愛着を持っていただくこともなりました。
引き続き、より多くの方が「いいな」と共感できるような取組みを進めてまいります。