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トンボを探してみよう!

更新日:2024年4月27日更新 印刷ページ表示

トンボを調べよう

 日本には海外からの飛来種を含め、約200種類のトンボが記録されており、そのうち長野県には約90種類が確認されています。トンボは水辺の環境を評価する指標種として調査されることがありますが、最近、環境の変化により見られる数が減って絶滅危惧種になっているものや、温暖化の影響で南方種が北上して分布を広げているものもいます。経年的にどのような種類のトンボが増えたり減ったりしているのかがわかると、環境の変化を知ることができ、地域の環境整備や生物多様性の保全に役立てられます。まずは、身近にいるトンボを調査してみましょう。(監修 福本匡志氏)

 長野県でこれまでに記録のあるトンボの一覧表です。松本近郊で目撃記録があるものには〇を付けています。長野県では令和5年度から7年度にかけて県版レッドリストの改定作業を行っています。トンボのレッドリストの種(絶滅危惧種)の情報がありましたら、「トンボみっけ(令和6年度市民トンボ調査)」でお知らせください。

トンボが見られる水辺の環境

 トンボが見られる水辺の環境は田んぼや池沼、湖、湿原、河川、小川・水路などさまざまですが、標高、水域の規模、水深、水質、止水・流水、水域と周辺部の植生などそれぞれの環境条件に適応した種類が生息しており、水辺の環境によっては見られるトンボの種類も変わります。逆にどのようなトンボがいるのかを調べれば、その場所の環境を評価することもできます。
 近頃は公園でトンボ池などのビオトープづくりが行われていますが、その地域に生息するトンボにも配慮し、人が管理しながら自然と調和した水辺環境を作っていくことが大切です。

梓川橋下流の左岸の画像
梓川橋下流の左岸

田んぼで見られるトンボ

 田んぼは食料となるお米作りの場ですが、赤トンボを始め、多様な生きものが生み出される場でもあります。
 代表的な赤トンボのアキアカネは、春に田んぼに水が入ると卵から幼虫(ヤゴ)がふ化し、ミジンコやユスリカの幼虫などを食べながら田んぼの水中で育ちます。7月の上旬頃、深夜から早朝にかけて成長したヤゴは稲の茎を上り、羽化して飛び立ちます。夏場は避暑のため高地で過ごしますが、9月頃、平地に戻り田んぼで産卵、卵は田んぼの土中で冬を越します。人が作り出す田んぼはアキアカネの発生場所として、なくてはならないもので、アキアカネは日本の稲作文化により繁栄した生物の1つといわれています。
 お米作りには、殺虫剤などの農薬が使われることもありますが、近頃は農薬の使用量を削減した「環境保全型農業」が進められており、赤トンボなど水田生物にも配慮が行われています。お米の生産者や消費者の方々に生物多様性に配慮したお米作りに関心をもってもらいたいところです。

高原で見られるトンボ

 中部山岳都市の松本では、北アルプスなどの山域に高原が広がり、高原の池沼や湿地には高冷地の環境に適応した高山性のトンボが見られます。乗鞍高原では、エゾイトトンボやルリイトトンボ、ルリボシヤンマ、カラカネトンボ、エゾトンボ、ホソミモリトンボ、ムツアカネ、カオジロトンボなどが生息し、特徴的な種が多く、高山性トンボの宝庫として、環境省による「生物多様性保全上重要な湿地(重要湿地)」に選定されています。

ルリイトトンボ

ルリイトトンボ

ホソミモリトンボ

ホソミモリトンボ

ムツアカネ

ムツアカネ

トンボを探しに行こう!

 どこでも見ることができるイメージのトンボですが、実は種類によって観察できる場所が異なります。前回の調査で目撃報告があった場所をご紹介します。探しに行ってみましょう!(過去の目撃例ですので、必ず目的のトンボが見られることを保証するものではありません)

 前回調査でオニヤンマの目撃情報が複数ありました。7月~8月頃田川や薄川の周辺に行ってみましょう。また合流地点付近ではハグロトンボの目撃報告も複数件ありました。

 松本城のお堀で羽化している個体がいるようで複数の目撃情報がありました。この場所ではシオカラトンボやハグロトンボの目撃情報もありました。

 岡田下岡田地区のと塩倉池周辺で目撃情報があります。またこの付近ではオニヤンマやハグロトンボの目撃情報もありました。7月~8月頃に見に行ってみましょう!

 開成中学校近くを流れる泉川ではオニヤンマ、ギンヤンマ、ハグロトンボ、シオカラトンボ、オツネントンボなどいろいろなトンボが目撃されています。前回の調査でもオニヤンマ、ギンヤンマ、ハグロトンボ、アオハダトンボの報告がありました。

アルプス公園のトンボ

 アルプス公園の公園にある池では、ギンヤンマ、オオルリボシヤンマ、チョウトンボ、ショウジョウトンボ、コオニヤンマなどがこれまで見られています。また、昨年の生物多様性エコスクール「トンボ観察会」では山と自然博物館周辺で初めてエゾトンボが確認されました。

注目されるトンボ

増えているチョウトンボ ホソミイトトンボ

 チョウトンボというトンボを知っていますか?

 後翅の幅が広く、翅のつけ根から先端部近くにかけて光沢のある黒藍色で、チョウのようにひらひらと優雅に飛ぶトンボです。松本ではほとんど目撃情報がありませんが、塩倉池とアルプス公園で目撃情報があります。近年、県内では目撃例が増えており、成虫は移動性が強く、温暖化も影響していると考えられています。

チョウトンボ

 ホソミイトトンボというイトトンボの仲間のホソミイトトンボも最近増えています。分布は主に南関東・東海~西南日本で、松本地域では1951年の波田町での記録のみでしたが、2022年、2023年と続けて松本市内で確認されており、北上により全県的に分布を広げているようです。

ホソミイトトンボ

 ホソミイトトンボは夏型と越冬型の季節型があり、発生期によって形態が異なります。越冬型は淡褐色の成虫で越冬し、越冬後の春には鮮やかな青色になって池沼などで見られます。見かけましたら「トンボみっけ(令和6年度市民トンボ調査)」でお知らせください。

 

ムカシトンボ

 ムカシトンボというトンボを知っていますか?

 トンボの仲間は均翅亜目(イトトンボ科、カワトンボ科など前後の翅が同じような形のグループ)と不均翅亜目(トンボ科、ヤンマ科など前翅よりも後翅の方が幅広いグループ)に大きく分けられますが、ムカシトンボは両亜目の中間的な特徴をもつ原始的なトンボとされ「生きた化石」ともいわれています。

 ムカシトンボは均翅不均翅亜目(ムカシトンボ亜目)に分類されていましたが、最近では遺伝子(DNA)による研究結果から不均翅亜目に含める研究者が多くなっています。比較的標高の高い、川の源流域に生息しており、松本では梓川地区や入山辺地区、三才山地区で目撃情報があります。

ムカシトンボ

トンボ豆知識

ヤゴの期間
 トンボの幼虫がヤゴであることはよく知られていると思いますが、実はヤゴの期間はトンボの種類によって大きく異なります。

  • シオカラトンボ
    3か月から8か月(越冬する場合)
  • ギンヤンマ
    3か月から8か月(越冬する場合)
  • ヤマサナエ
    2年から4年
  • オニヤンマ
    3年から4年
  • ムカシトンボ
    5年から8年

 ヤゴは同じ場所で成長します。成長する間水辺の環境が変わると生きられないため、特にヤゴの期間が長いヤマサナエやオニヤンマなどにとっては水辺の環境を守り続けることがヤゴの成長にとってとても大切です。

世界一大きなトンボ 世界一小さなトンボ
 世界一大きなトンボは、オーストラリアに生息するテイオウムカシヤンマと言うトンボで体長16cm。日本に生息するムカシヤンマの約2倍の大きさです。日本で一番大きなトンボはオニヤンマで11cm程度です。

 世界一小さなトンボは、日本にも生息するハッチョウトンボが最小のトンボの1つにあげられ、体長は約2cm程度です。長野県にも生息していますが、産地は限られ、松本市では過去に記録があるものの最近は確認されていません。このページのトップに戻る

ハッチョウトンボ

草にとまるハッチョウトンボ

死滅回遊(無効分散)するトンボ
 ウスバキトンボというトンボを知っていますか?松本では夏ごろに見られるトンボですが、春先に東南アジアから九州や四国の南端に飛来して繁殖、1か月ほどで卵から成虫になり世代を繰り返しながら日本を北上していきます。9月頃には北海道でも見られるようになります。しかし寒さに弱いため、越冬することはできず冬には全て死滅してしまいます。このように本来の分布域ではない地方まで移動して死滅してしまうことを死滅回遊(無効分散)と呼びます。一見無謀にも見える生態ですが、温暖化などの気候変動によってはそれまで死滅していた地域で新たに定着できる可能性もあり、事実ウスバキトンボの生息域は大変広いため、この生態は種の生存に有利に働いていると言えます。

ウスバキトンボ1

草にとまるウスバキトンボ

ウスバキトンボ2

群れで飛ぶウスバキトンボ

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